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2007年8月

2007年8月31日 (金)

B−Iとの出会い

ヤマハB−Iが誕生したのは1974年でした。ご存知の方も多いとは思いますがB−Iにはプロトタイプが存在し、それが誕生したのが1973年で、当時は東京や大阪で試聴会が実施されたそうです。
B−Iが誕生した当時は私がまだ小学生で、当然ながらその存在は知りませんでした。

今回のブログでは、その私が何故B−Iに嵌ってしまったか、ちょっとその背景も含めて書きたいと思います。

学生だった1980年代の初頭、友人の下宿で友人が作った縦型FET(2SJ18/2SK60)アンプの音を聞いて、その迫力のある音に感動してしまいました。
オーディオが好きだったのですが、通信技術系の学校に進学したため、それから特に力も入れず、当時の第1級無線通信士と第1級無線技術士の国家資格の取得に没頭しました。予備試験を含めると1通は9科目、1技は5科目だったので大変でした。
電気通信術(いわゆるモールス)は、英文普通語(プレーン)が125字/分、英文暗語(コード)が100字/分、和文が85字/分でしたので難関でした。おかげで、20年以上経過した今でも和文と欧文のモールスは覚えています。
なんとかこれらの資格を就職前に取得できましたが、約2年間も国家試験の受験に没頭してしまった結果、すっかり縦型FETアンプの音の感動も忘れてしまいました。

その後、ある通信会社に就職し、無線通信オペレータを経験し、その後は大電力の短波無線送信機や空中線の保守をやりました。当時はまだ真空管式の送信機で日本無線製の7F25Bや8F71RA(陽極損失はそれぞれ1kWと10kW)といった真空管が使用されていました。
(写真は当時の送信機で使用されていた7F25Bで記念にもらったものです。8F71RAは付き合いは長かったのですが、セラミック管なので見た目が面白くありません)

7F25B




普通はこういった業務用の通信機器はメーカと保守契約を行うのですが、既に短波無線を使用したサービスは廃止の方向になっていて、会社の予算があまり付かなかったため止むを得ず全て社員が直営で修理調整を行ってました。会社の先輩方は優秀な方ばかりで、真空管方式華やかなりし頃は、送受信機はおろか、一部屋を占領してしまうほどの超大型の真空管試験機まで自分たちで作っていたそうです。私が入社した頃の課長さんたちがその世代で、武勇伝を良く聞かされたものです。ちなみに別の職場にも無線送信所があり、入社当時に設備見学に行った際は、昭和10年代(送信機前面の銘板で確認しました)に導入された送信機(数10kwの出力があったと思います)が現役で動いていたのには本当に驚いてしまいました。終戦から40年近くも経っていたのですが、これも先輩方が大事に保守をしていたからでしょう。

真空管はトランジスタと異なり劣化してくるとエミ減(電子エミッション減少)が始まりプレート電流減少し、出力が低下します。
真空管は1本100万円もする高価なものでしたから、なんとか長く持たせようとバイアスを調整し、規定の出力が出るようにします。
使用時間が長くなると、それも限界があります。制御グリッド電流が流れ始めるくらいにバイアスを浅めに調整しても規定の出力を出すことが出来なくなります。そうなると交換の時期です。真空管の交換や修理・保守の際はきちんとコンデンサ1個に至るまで放電をしないとヘタすりゃ死に至ります。十分注意していましたが、お皿のようなセラミックコンデンサに何度か電撃を食らわされましたがshock 
何せ、陽極には数千〜1万ボルト近くも印加されており、そのへんのちっぽけな真空管アンプとは違います。 
こういった送信機などの修理・調整や、付帯装置を自分達で開発したおかげで学生時代の教科書知識や資格知識だけでない生の電子回路に関する知識やノウハウが蓄積できました。その知識なども活用して会社の先輩に頼まれて山水AU−D907を修理してあげたりしました。
(今年の正月、その先輩に久しぶりに会い、「おかげで修理から20年たってもまだ動いているよ」と言われ感激しました)

1990年代の前半には、上記の職場を離れシステム開発の仕事になりました。
それはそれで面白かったのですが、少々地に足がついておらず、物足りない気もしていました。 そんな状況の時に、ふと学生の頃の縦型FETアンプのことを思い出しました。

もうそうなったら居ても立ってもいられません。

しかし、もうその頃には既に秋葉原に行っても2SJ18/2SK60なんて石は売ってません。
また、参考になる回路もなかったので、昔の雑誌記事を捜してみることにしました。
その頃は、ヤフオクも無く、昔の雑誌記事を入手したくても難しかったため、国会図書館に何回も通い、記事のコピーを集めました。その中で見つけたのがヤマハB−Iなのです。
縦型FETと言えば2SJ18/2SK60しか知らなかったのですが、
Pd=300Wの2SK77という巨大な縦型FETをシングルプッシュで
使用したと書いてあります。sign01
また、この素子はB−I専用に開発したとも書いてあります。sign01sign01
おまけに、信号経路の差動アンプに使用されている横型FETや縦型FETは全てYAMAHAが新たに開発したと書いてあります。sign01sign01sign01
トドメには、終段FETのドライブ回路は2SK77を余裕を持ってドライブするために新たに開発したと書いてあるじゃないですかっsign01sign01sign01sign01

とにかくそのB−Iというアンプが欲しくて欲しくて欲しくてしようがなくなりました。1〜2年後、無線と実験のある号に不動品(当時は当然ヤフオクみたいなものはありませんでしたので、時間がかかってます)が2万円で出てたので速攻で購入。
回路図もないので、基板から回路図を起こし、修理に挑みました。
送って頂いた不動品は、状態はあまり良いとは言えませんでしがが、夢にまで見てやっとB−Iを入手した喜びの方が大きかったような覚えがあります。
基板もガラスエポキシを使用してあり、現代の安っぽいプラスチック成型物も使用されておらず、業務用の様にしっかりとした造りで、サイズ以上に非常に重たく全体的に大変コストを掛けているところも好きです。

到着して早速FETを調べると、残念ながら片チャンネルの2SK77は死んでましたが、もう片チャンネルは生きていました。従って、正常に再生はできませんので、また1〜2年位待ちました。
その頃にヤフオクが開始され、ずっとウォッチしていましたところ、ジャンク品が出てきましたので速攻で落札。その落札品がこのブログのレストア記に記載してるB−Iです。

最初にジャンクを入手して音を聞くまでに数年かかってしまったのであります。shock

でも、感激はひとしおでした。smile その感激がいままで続いているのでしょうね。